『アンストッパブル』

『監督 トニー・スコット

編集 クリス・レベンゾン

音楽 ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

トニー・スコットの遺作である。

今年に入ってトニー・スコットの作品を12作チェックしたのだが、なんとも偉大な監督であることを痛感させられた。正直初め見たころ(『マイ・ボディガード』、『デジャヴ』、『ドミノ』辺りから見たのだが)は、イマイチしっくりこない監督であった。もちろんこれらの作品も面白く、特に『デジャヴ』の冒頭の平行カッティングや、『マイ・ボディーガード』の銃撃戦の音響など途轍もなく格好いいのであるが、監督のスルスルと見せる鮮やかな筋運びや、そのせいで多数登場するお馬鹿なキャラクターらと、『スパイ・ゲーム』以降取り入れようとした安直ではないドラマ描写とが齟齬をおこしてしまい、一本の作品として見るとちぐはぐな印象が残ってしまった。

彼の作品を俯瞰してみると、大作と呼べるような作品は一本もなく、また『クリムゾン・タイド』以降はほとんど恋愛描写がなく、事件が起こって、主人公が一生懸命仕事して職責を全うするというだけの映画ばかりになる。人間模様のドラマはおまけ程度にしか描かれない。そのストイックな作品群に、監督の画面作りのセンスやシャープな演出が噛み合うことが、彼の作品の面白さだったのだろうと今にして思う。

そして『サブウェイ123 激突』で、彼のドラマ描写は一旦の完成を見せる。地下鉄ハイジャック犯と鉄道職員とに芽生える、友情とまでは言えない奇妙な感情。結局『スパイ・ゲーム』以前のような安直な人間関係と大して変わらないのだが、しかし明確にドラマを描こうという意志が感じられた。

アンストッパブル』ではさらに完成度を高め、スピーディな筋運びと、こいつ馬鹿だなーと思ってた主人公に見事に感情移入させられてしまう手腕、一分の弛緩もなく完結まで突っ走るすばらしい作品で、いかにもトニー・スコットらしい作品だったと思う。

彼の映画は、何も頭を使わず、場面に対して呻いているだけで楽しめてしまうのだ。そんな素晴らしい作品を延々と作り続けていた、恐ろしい監督であった。新作が見たかった。