『ハート・ロッカー』

監督 キャスリン・ビグロー

ジェレミー・レナーぽっちゃりしてるね。

ジェレミー・レナー演じる爆弾処理兵ジェームズが戦争で疲弊するお話。

俺は戦争映画をまともに見てこなかったのだが、自分がよく見ているポリスアクションやクライムアクション作品と大きく違う点は、物語の論理性が弱くても問題ないという点。

戦場とは一般アメリカ人がおよそ送っているだろう平均的日常と比較するならば、不合理の連続ばかり起きる非日常である。銃撃戦が描きたいからアクション作品作ろう! となった時に、主人公と対立する強敵には目的があり、そのために行動(概ね犯罪)を起こし、職業柄か不運からか主人公はそれに巻き込まれる。クライムアクションならその逆。というプロットが必要になるのだろうが、戦争映画はそれらが必要ない。いきなり戦闘とか全然オッケー。倫理的な是非は置いておくとして、それってすごいことじゃない? と思った。

で、主人公はこの映画で何やるかって言ったら、まじで爆弾解体するだけじゃないですか。これが本当に驚いてしまって。そこに理由要らないんだ……すげえなって。常時緊迫感駄々漏れ。爆弾処理っていうチョイスも良いよね。あんな警戒するんだね。びっくりした。爆弾処理の危険性の演出、主人公の性格と実力、その破天荒ぶりとそれゆえに起こる仲間との齟齬。3回の爆弾処理でほとんど演出してるからね。もう笑ったよ。人生のちゃぶ台ひっくり返された感じある。ぽーん、とね。完全に盲点突かれたからね。戦争映画すごいわ。そりゃ何作も傑作出るわ。

主人公は一見ただの解体キチガイに映るが、実際は倫理的で正義感の強い人物。解体の経験豊富ゆえに自信家でもあるが、しかしある事件をきっかけにその自信すら瓦解していく。

その正義感で部下を危険に巻き込み、そして自身の無力さ、戦場の非常さを体感していくジェームズ。

というところまでは良いのだが……最後のオチがなんだかな。きっとそういうことなんだろうけど、ちょっと角度を変えてしまえばバットマンや原作『キック・アス』の親父のような、歯止めの利かない正義感を持った異常者へ足を踏み入れてしまいそうな、危険な人物にも見えてしまう。

いきなりスーパーのカットが挿入されたり、直後のシリアルずらーっのカットは実に見事であるが、それだけで表現しきれてないのではないかなあ。

ビグローって人間ドラマの描き方が体育会系っていうより……なんなんでしょうね。ネットリ描く割に、唐突というか、物語的必然でそういうシーン入れてるだけっていうのも違うか。『ハートブルー』、『ブルースチール』、『ハート・ロッカー』と見たけど、どれも人間関係の描き方が、個人的にしっくりこないんですよねえ。本作もホモソーシャル的なシーンがガッツリありますけど、ジェームズの抱えている問題の大きさが逆に見えにくくなってる気が。

銃撃戦は超かっこよかったですね。